その事件はリアルタイムで映画化された〜ソーシャル・ネットワーク

映画

さて、先日映画『ソーシャル・ネットワーク』をみてきた。そろそろネタばれありで感想を書いても良いかな?ということで…。

『ソーシャル・ネットワーク』は、世界最大のソーシャルネットワークサービス (SNS) 『Facebook』の創業について、社名及び個人名を実名で、かつ実際にあったとされることがらをベースとして作られたフィクションである。

例えば劇中マーク・ザッカーバーグが彼女にフラれたことをきっかけに新しい Web サービスを立ち上げているが、実際には確かにとある女性との喧嘩がきっかけにはなっているそうであるが、当時付き合っていた彼女とは現在も交際中なのだそうである。

なので、この映画はあくまで「物語」であるとしてみないとわけのわからないことになる。そこは注意が必要である。実在する事象、人物が実名で登場しても、だ。

そもそも Facebook は他の Web サービスと比べて非常にリアルタイム性が高い。もちろんゆっくり使うことも可能ではあるが。

自分の投稿にコメントがついたり「いいね!」されたりすると、画面上部の「お知らせ」のところが赤く通知される。それをクリックするとすぐ該当する投稿に移動して、返事を書く。しばらくするとまた赤い通知が..という感じで、チャットとはまた別の意味でものすごいスピード感のあるコミュニケーションが行われる (もちろん、チャットもある)。

そういう意味で、Facebook やザッカーバーグの映画を、今、Facebook が急成長しているという事件になっているこの時にほぼリアルタイムで作ることに大きな意義があったのではないだろうか?彼らが隠居したり亡くなったりした後では遅すぎる。

本当ならこういう実名の映画は、それが本人たちへの取材を伴わないフィクションであればなおのこと、名誉毀損とかそういう訴訟になる可能性があるので、存命中に製作されないことが多いと思う。しかし、今これをあえて作り、公開し、Facebook 側も「事実ではない」と声明を出しながらも事実上公開を黙認している。これこそが Facebook の性格をよくあらわしていると思うし、あまり例のない「事件」がおきているといえるのではないだろうか?

ラストシーン、いろいろあってすべての「友達」を失ったマーク。世界最大のソーシャルネットワーク運営者であり、世界でもっとも Facebook 上に友達が多いであろうマークがリアルの友達をすべて失うというのは皮肉なラストだ (重ねて言うが、これは実在のマーク・ザッカーバーグではなく、物語の中のマーク・ザッカーバーグである)。その彼が、最初にフラれた彼女に Facebook で友達申請をして、画面をリロードしながら赤い通知が点灯するのを待ち続けている…。

これは、寂しいラストでありながら、上に述べたように多くの Facebook ユーザーが実際に通知がつくまで画面をリロードするという操作をした経験があるのではいだろうか?この物語は、まだまだ進行形であり、続いていく事件であると想像させるエンディングであった。

また、この映画は物分かりの良い、老獪で真摯な弁護士達の視点で描かれているわけであるが、最後に2年目の新人弁護士だけはマーク青年のことを理解できそうな兆候を示す。つまり、あのシーンは、老人達には理解できないマーク青年が、決してモンスターではなく、人とのつながりを求めている普通の青年なんだと、ということを示していたのではないだろうか。

これまでに、少なくとも僕は前例を知らない、まったく新しい映画が作られた。と、そう感じた。
これは名作だ。

蛇足だが、この映画は米国の学校社会におけるジョックスとナードの階級差別の存在を踏まえておくとよりおもしろいかもしれない。これまた実際に米国で起きた事件をもとに製作されたドキュメンタリー映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』もみておくと、この映画の背景がいろいろと想像できるだろう。

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