年が明けてもうずいぶんたつといえばそうであるが、なんでも昨年末、NHK の紅白歌合戦に美輪明宏さんが出演されて、ヨイトマケの唄を歌われたそうである。かつて職業差別を助長するとしてこの曲をかけるのを見合わせる放送局もあったそうだけれども、時代もかわったものだということで話題になったそうだ。
ちなみに、個人的にはヨイトマケの歌より、丸山明宏時代の名曲「メケメケ」の方が好きだったりするので、ご紹介がてら動画をはっておきまする。
で、前からこのヒトについて思っていたことがある。
たぶん、このひとは本当に妖怪なのではないだろうか。それは『ハウルの動く城』で演じた「荒地の魔女」などよりよっぽど恐ろしいのではないか。
妖怪漫画家水木しげるは実は本人もまるで妖怪だということを、同氏への愛をこめて言うことがあるけれども、たぶんそれと同じ程度に美輪明宏というひとは妖怪なのだと思う。
ちょっと残念なのは、一時期某テレビ番組で、わけのわからない霊能者風のおじさんと一緒に前世がどうの、オーラがどうのと言っていたのが、明らかに人心を惑わす面があってあまりよくないなーと思っていたのだけれども。
ただし、この方は、いやもちろんそのときは真剣にそれをやっていたのは間違いないけれども、それは『黒蜥蜴』を演じているうちにご本人自身が美少年歌手から女優になってしまったのと同じように、そういう「場」というか「役割」を与えられたことに対し、それを全力で演じていたというのが本当のところだと思う。
その根拠は、髪の毛を現在のように黄色に染めたとき、理由を尋ねられた際に「前世がピカチュウだから」と答えられたことである。
しかも今年になってもまだ言っていたらしい
参考リンク:美輪明宏 前世はピカチュウだから/芸能速報/デイリースポーツ online
もちろんシャレというか冗談である。んが、そもそも真剣にオカルトに前世がなんだかんだと言ってるひとの言う冗談ではないわけで、ある種某番組で前世がなんだかんだという役割をやっていたことへの自己皮肉という部分もあるのではないだろうか。
そして、これはある意味衝撃的なご発言である。
妖怪研究家としてもとても有名である、小説家京極夏彦氏がよく発言していることであるが、「妖怪とは現代でいうところのポケモンであった」という説を知らずにおっしゃっているとは僕には思えないのだけれども。
江戸時代、黄表紙などで妖怪がさかんにとりあげられたのは、今で言うポケモンのように、キャラクターのおもしろさからマンガになったりグッズができたりしたのであって、前近代的にオバケを怖がっていたのではなく、むしろ現代人の方がやれ先祖や水子といった死人の霊がどうだのパワースポットがどうだの、よっぽどオカルトめいているという説である。
たしかそのハナシは「妖怪大談義 」という対談集で詳しく述べておられた記憶があるので、ご興味おありの方はそちらをご参照のほど。
「前世がピカチュウである」というのは、前世がなんだかんだと言うあの番組のような言説を真剣に信じているような人々をなから揶揄しつつも、さらにやはり自分は妖怪であることを肯定しているという、非常に高度で多重の意味を含んだご発言なのではないか、と、僕は疑っている。あ、もちろん穿ちすぎカモしれませんがね(苦笑。
たぶんあの方は、あらゆるものを肯定して飲み込んでしまう、とても恐ろしくて深いチカラを持っているのではないかと僕は思う。だから、男性なのに女優になってしまうし、オカルトっぽい番組でそれらしい役回りもやるし、ジブリ作品で魔女だって演じてしまうのである。
うっかり近寄ると取り込まれてしまう、とても恐ろしい妖怪に違いない。
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